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上野文化の杜新構想実行委員会と公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京による、上野公園とその周辺地域を舞台に、世界に向けて情報発信する社会包摂をテーマにした文化芸術事業「UENOYES (ウエノイエス)」での今年度の海外アーティスト招聘プログラムでは現在、11月17日までの金土日祝、上野の歴史的価値のある建築物である “幻の駅” 旧博物館動物園駅にて作品展『想起の力で未来を:メタル・サイレンス 2019 (Reminding Future: Metal Silence)』を開催中。
 
今回招聘される海外アーティストはスペイン出身の作家、クリスティーナ・ルカスとフェルナンド・サンチェス・カスティージョの2名。
クリスティーナ・ルカスは、スペイン・ゲルニカの悲劇に発想源を置き、空爆の開始から現在に至る世界の市民の犠牲者をたどる空爆地図を表す全6時間を超える3面映像インスタレーションの大作 ≪Unending Lightning (終わりえぬ閃光)≫ を展示。この会場の持つ歴史とメッセージ性が重なり合う作品展示となる。
フェルナンド・サンチェス・カスティージョは、上野公園の多種多様な豊かな樹木にちなんだ、”折れそうになっても生存し続ける” ブロンズ製の木の新作 ≪Tutor (テューター)≫ を展示。
 
この両作品を合わせた今回の展示タイトル『想起の力で未来を:メタル・サイレンス 2019』は、人類史を声なき者の視線で再構成するクリスティーナ・ルカスの作品 ≪Unending Lightning≫ の中で触れられる “死を導く鋼鉄の兵器”、そして、フェルナンド・サンチェス・カスティージョによる植物という言葉を持たない樹木 ≪Tutor≫ の沈黙を表現できる芸術の素材としてのブロンズ、という金属の二面性も表している。

 

 
oct2019_cristinalucasクリスティーナ・ルカス / Cristina Lucas


1973年スペイン・ハエン生まれ。マドリード・コンプルテンセ大学、カリフォルニア大学アーバイン校で学ぶ。ライクスアカデミーとニューヨークでのレジデンス経験を経て、現在はマドリードで制作活動を行なっている。写真、映像、インスタレーション、ドローイング、パフォーマンスなど多領域に渡るメディアを用いて、一般的な通説への異なる読解をもたらす可能性を探り、現在へのより良い理解を提供する。
  
作品名 ≪Unending Lightning (終わりえぬ閃光)≫
ビッグ・データを応用し各地で多数の専門家の協力を得て、5年をかけて調査制作した作品を展示。昨年イタリア・パレルモで開催された「Manifesta 12」は、英国のガーディアン紙でその年の最高峰の一つと称賛されたが、その展示作品の中でも本映像インスタレーションはとりわけ高く評価された。
スペイン市民戦争の真っ只中、フランコ将軍に加担したドイツ軍によるゲルニカの爆撃で多くの市民が犠牲となった史実はピカソの作品でも有名である。ルカスは、空爆が最初に行われたとされる1911年から世界中の民間人に対する全ての犠牲を現在に至るまで辿る3面スクリーンの6時間にわたる本作をライフワークにしている。
左面はどこの爆撃で何名の市民が犠牲になったか、中央はその地域の地図がクローズアップされ、爆撃の規模がドットで示され、右面はその出来事にまつわる写真で構成されている。日本での展示に際して、東京空襲、広島と長崎の原爆投下を含む第二次世界大戦中に日本各地で犠牲になった市民の数を再調査し、江東区にある東京大空襲・戦災資料センターの政治経済研究所戦争災害研究室主任研究員山辺昌彦氏の協力のもと、より正確な日本のデータが作品に反映される。

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oct2019_fernandosanchezcastilloフェルナンド・サンチェス・カスティージョ / Fernando Sánchez Castillo


1970年スペイン・マドリード生まれ、マドリード在住。マドリード・コンプルテンセ大学で美術、マドリード自治大学で哲学、パリ国立高等美術学校でも学ぶ。ライクスアカデミーでのレジデンスを経て、現在は、ジュネーヴにある国連の研究チーム (PIMPA、記憶、政治、芸術実践) メンバー。フランコ政権下で幼少時を過ごしたカスティージョは、社会や歴史の出来事に鋭い関心を抱き、権力と表象に関わる作因を分析し、歴史的な言説を多角的に批評し、彫刻、絵画、映像で表現する。
 
作品名 ≪Tutor (テューター)≫
上野公園は多種多様な樹木の宝庫である。こうした上野の森の豊かな自然から発想した新作の ≪Tutor (テューター)≫ (2019) は、細いブロンズ製の木の枝がともすれば折れそうにジグザグに造形された彫刻。植樹された木々にも、すくすくと大木に育つものから病気や害虫などで枯れてしまうものがある。例えば、上野公園の歴史では1879年の米国のグラント将軍夫妻によるロウソン檜と泰山木の植樹が有名で、動物園入口付近のグラント記念碑のそばに現在も2本が植わっている。しかし将軍が植えたロウソン檜は衰えており、現在、樹勢の衰えを治療する処置などが施されている。カスティーリョの木の新作は、人間より寿命が長い樹木も同様に、社会や環境の変化で生と死が左右されること、人間のようにさまざまな生き方があること、そして健康とは、普通とは何かを問いかけ、寛容でインクルーシヴな社会を示唆する作品である。

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UENOYES (ウエノイエス)
社会的包摂文化芸術創造発信拠点形成プロジェクト。上野公園とその周辺地域を舞台に社会包摂をテーマにした文化芸術事業を展開し、世界に向けて情報発信している。
コンセプト:
一つ一つの色々な色がしっかりとその色のままで見ることができるのがUENOYES。
隣の色と混ざってしまって自分の色がわからなくなるのではなく。
同じような色だから、みんなだいたい同じ色でいいよねと言われて、自分の色がみんなと同じになってしまうのではなく。
一人一人の人がその人のままでいることを自然に受け入れてくれるのがUENOYES。

総合プロデューサー:日比野克彦
公式サイト

 

 
旧博物館動物園駅
1933年12月京成電鉄株式会社の駅として開業。当時、駅舎の建設予定地が御料地であったため、御前会議での昭和天皇の勅裁を受けての建設となり、こうした事情が考慮されてか、駅舎内外の意匠は西洋風の荘厳なつくりとなっている。開業以後、東京帝室博物館 (現・東京国立博物館) や恩賜上野動物園の最寄り駅として利用されてきたが、利用者の減少により1997年に営業休止、2004年に廃止。その後、2018年4月19日には、特に景観上重要な歴史的価値をもつ建造物として鉄道施設としては初めて「東京都選定歴史的建造物」に選定。2017年6月に京成電鉄株式会社と国立大学法人東京藝術大学との間で、連携協定が結ばれた。駅舎内部を改修し一般公開 (イベント時以外非公開) するにあたり、東京藝術大学の美術学部長でありUENOYES総合プロデューサーの日比野克彦がデザインした出入口扉を新設し、上野文化の杜の2018年度事業の一環としてアート作品の展示を行った。
 

 

「想起の力で未来を:メタル・サイレンス2019」

 
開催日時:2019年10月18日(金)~11月17日(日) の金土日祝10:00~17:00 ※全16日間
会場:旧博物館動物園駅 駅舎
住所:東京都台東区上野公園13-23
 
参加無料
※内容変更の可能性有り。※入場制限がかかる場合有り。
※京成電鉄施設のため、鉄道業務に関する緊急の事態には作品鑑賞できない場合有り。
 
主催:上野文化の杜新構想実行委員会、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
※本事業は令和元年度 文化庁国際文化芸術発信拠点形成事業です。
 
UENOYES 公式サイト