「自然のうちなる意志について」画家・安藤光浩の世界
5月28日、在スペイン日本国大使公邸において、トレド在住の日本人画家、安藤光浩(あんどう・てるひろ)氏による「自然のうちなる意志について」展の開幕式が行われた。
同氏は2014年のサロン・デ・オトーニョ賞をはじめとする多くの賞を受賞するなど、スペインの今を代表する現代美術家の一人として活躍中で、その作品はマドリード国立図書館、トマス・イ・バリエンテ・マドリード現代美術館、国立UNED現代美術館、BMW、ウェリントン財団等のコレクションとして所蔵されている。
「一つ一つの作品は俳句のように表現のルールに疑問を呈し、鑑賞者と共に個人的な世界を作り上げるものである」と安藤氏。
その作品は、日本とスペインの二つの文化からの影響を受けながら、より広範な層を魅了する。
日本スペイン交流400周年事業の一つとして、2013年7月にトレドのサン・マルコス美術館にて開催された同氏の個展「Cuatro lágrimas・よっつのなみだ」では、なみだ1「皺」、なみだ2「ヴァイス・ヴェルサ」、なみだ3「シーシュポス」、なみだ4「記憶」と、作品の制作年代別に異なる表現方法による絵画を展示した。
なみだ1「皺」:Lágrimas XII-01(アリカンテ州議会所蔵)
なみだ2「ヴァイス・ヴェルサ」:Viceversa IX-13
なみだ3「シーシュポス」:Sísifo Xi-03
なみだ4「記憶」:Memorias S04-3 (Nambaya Okita, 1798 – Kitagawa Utamaro)
あたかも壁の一部に奥行きがあるように感じさせる騙し絵の一種のような「ヴァイス・ヴェルサ」シリーズでは、作品の至近距離から鑑賞すると意外な発見があるかも知れない。
日本大使公邸を訪れる機会があれば、是非邸内に飾られた同氏の絵を観賞されることをお薦めしたい。
安藤光浩 略歴
香川県出身の美術家。1984年多摩美術大学卒業後渡欧。
ドイツ、イギリス、オーストラリア、スロベニア等で制作発表。当時の作品は、ミニマリズムやコンセプチュアルアートの影響を受けた平面作品やインスタレーションであった。
1992年よりスペインのトレドに在住。現代美術のアイデアを競う潮流に違和感を覚え、8年間家具工場で働きながら、古典芸術の地道な研究に没頭した。
2000年に展覧会活動を再開。国立レイナ・ソフィア美術館やIVANバレンシア現代美術館等、50数回の企画展に選出される。クラシックの本質を咀嚼した作品が評価され、数々の現代美術賞を受賞。
2008年最も権威ある現代美術賞「BMW賞」をソフィア・スペイン王妃(当時)より授与された。50数点の作品が国公立の美術館に収蔵されており、2013年にトレド王立芸術科学歴史アカデミー名誉会員に任命された他、現在は香川県名誉大使でもある。