女子フットサル日本代表主将、中島詩織選手
男子のような力強さや圧倒的なスピードは女子にはないかもしれませんが、その分 戦術として崩す部分も多く、繊細な部分が多く見られるのではないかと思います。
女子フットサル日本代表で主将の重責を担う中島詩織選手。彼女はスペイン女子フットサル一部リーグで3シーズンを過ごし、現在日本でオフを満喫中。日本の女子フットサルの牽引車である中島選手に、スペインで過ごした3年間と将来への思いを聞いた。
ー スペイン女子フットサル一部リーグで3シーズン目を終了された訳ですが、先ずは FSFリオハでの今シーズンを振り返っての感想を聞かせて下さい。
今シーズンは一部リーグ参加16チーム中6位という結果で終了しました。4位以内に入ればリーグ終了後のカップ戦への出場権を得られたのですが、惜しくも入ることが出来ず正直悔しい気持ちもあります。しかし、去年は残留争いをしていた時期もあったことを考えると、今年の最終順位にはチームとしての成長も感じられると思います。監督がチーム就任後3年目であるということもあり、監督の目指すフットサルが徐々にチームに浸透して来ているのも感じられました。
個人としては今シーズン通算18ゴールを上げる事が出来、チーム内の得点王となることが出来ました。ゴールだけが評価されるものではないとは思いますが、目に見える結果を残せたことで自分の成長を感じることが出来ましたし、自信にも繋がりました。
ー スペインに来られて1シーズン目はアトレティコ・マドリード、2、3シーズン目はFSFリオハで過ごされた訳ですが、この二つのチームの違いやそれぞれの魅力等について教えて下さい。
アトレティコは一言で言ってしまうとスター軍団チームです。私が所属していた時にはスペイン代表が4人もいましたし、元ブラジル代表、そして代表に選ばれていない選手でもレベルは高く、試合ではスターティングメンバーもサブメンバーも遜色はありませんでした。個人個人の能力が非常に高く、チームで機能しない時があっても個人で打開できる力のある選手が多く所属していました。
また、経験値が高く、試合での「勝ち方」を知っています。観ていてとても面白いスペクタクルなフットサルが出来るチームだと思います。
リオハにはアトレティコのようなスター選手はいないのですが、最後まで諦めず粘り強い戦いが出来るチームだと思います。個人個人の能力が飛び抜けているわけではありませんが、その分チームとしてどう戦うかということが求められます。それにより、セットプレーやインプレー中の戦術をたくさん学ぶことが出来ました。
試合中に皆が集中して団結出来た時は存分に力を発揮できますが、主力の選手のコンディションが悪いと影響が出てしまうこともあるので、チームとして波があるなとは感じます。
ー FSFリオハのチームメイトの皆さんとの関係はいかがですか? 練習面、試合面、またフットサルを離れてのプライベートな面ではどうでしょうか?
2シーズン目ということもあり、ピッチ内外関係なくチームメイトとは信頼関係が築けていたと思います。ピッチ内では選手として、仲間として信頼してもらっていると感じました。その信頼関係の下でピッチ内でも何でも言い合えるようになりました。スペイン語も初めの頃よりはかなり話せるようになったので、練習中でもプライベートでも冗談を言い合えるようにもなりました。大体私がからかわれることが多いのですが(笑)。
みんなには助けてもらうことも多く、特にルームメイトのエバ(11番)とベア(8番)には感謝してもしきれません。二人とは多くの時間を過ごし、たくさんのことを教えてもらいました。いつも側にいてくれ、私が悩んでいるときは相談に乗ってくれ、困っているときは助けてくれ、悲しんでいるときは気を利かせてそっとしておいてくれたり、励ましてくれたりもしました。もちろん楽しい時もたくさん過ごしました。みんなとの思い出は勿論、二人との思い出はこれからもずっと忘れません。
ログローニョに来てフットサルを学べたこと、そして何よりこの二人に会えたことは私の人生で大変幸運なことだったと思います。
(写真:中島選手とFSFリオハのチームメイト。左からEva Ortega、Natalia Peche、中島詩織、Bea Martin各選手)
ー 昨シーズン、今シーズンと住んでおられたログローニョとはどのような街ですか?
マドリードのように大きい街ではありませんが、田舎ということでもなく、周りに何でもあるのでとても住みやすい街です。ワインの産地であり、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼者の通り道でもあります。
そして今年はヨーロッパのスポーツ都市として任命されたようで、週末は色々なスポーツの大会が開催されていました。
ラウレル通りというバルがたくさん密集する通りがあるのですが、そこでのピンチョス巡りはとても楽しいです。リオハの周りの地域からもたくさんの人が訪れます。私たちのチームのホーム試合後、相手チームがログローニョに残り、そこでピンチョス巡りをしていることも多いようです。私は大好きです (笑)
ー ログローニョに住んでおられていいなと思われたこと、また反対に困ったこと等はありますか?
大きな街ではないのですが、周りに何でもあるので住みやすい街です。また、自転車で大抵の場所に行けてしまうのもいいところです。エブロ川という川も近くにあり、川沿いを走るのはとても気持ち良いです。
困ったことというか、マドリードやバルセロナに比べて圧倒的に日本人の数が少ないので、日本人に会う機会が少なく、それは少し寂しいです。日本からログローニョに来る時は交通の面で少し不便でもあります。
ー フットサル女子日本代表のキャプテンも務めていらっしゃいますが、日本代表チームに掛ける思いなどを教えて下さい。
フットサル女子日本代表は、アジア・インドア・ゲームズ (今あるアジアで唯一の公式大会、インドアのスポーツが色々ある中でのフットサル競技) で3連覇を達成しており、アジアの中では強さを示せているとは思います。
しかし、毎年12月に行われるワールドトーナメンに過去4回出場している中で、まだ予選を突破したことがないというのも事実です。世界の強豪と対戦したときにチーム力の差と いうのが結果として表れたものだと思います。
2007年に発足してから代表活動の中での環境も格段に改善されて来ていますし、チームとしても成長し続けていると思います。これからも成長出来るチームであると思うし、していかなければならないと思います。世界の中でチームとして、そしてそれぞれの選手が個人として自信をもって堂々とプレーをし、世界の強豪と互角に、そして競り勝てるチームになりたいです。選手の中の一人としてそれを体現していきたいです。
ー 日本とスペインのフットサルの違いやそれぞれの魅力について教えて下さい。
練習内容
日本:基礎練習をしっかりとやる。例:パス練習等
スペイン:短い時間で濃い内容の練習をする印象があります。
試合内容
日本:パスを繋いで崩そうという意識が強い。
スペイン:日本と比べるとカウンターの速さが際立っています。また、一瞬でスイッチが入ってスピードが変わる瞬間が多くあるし、そういう対応が上手い。攻めの意識、前に進む意識が強い。フィニッシュに持ち込む意識が強い。
戦術
スペイン:サッカーやフットサル文化が日本より根付いているせいか、いい戦術眼を持っていると思います。
その他
スペインには全国リーグがあり、ホーム&アウェイ方式で戦うので大変面白い。また、年間を通して試合数が多く心身ともにタフさが身に付くし、試合の経験をたくさん積める。日本国内では女子は地域リーグしかなく、ホームやアウェイの概念は特にありません。
ー 日本とスペインで目標にされている選手、または好きな選手はいますか? それはどうしてですか?
日本にもスペインにもたくさんいます (笑)。同じチームにもいますが、敢えてスペインの他チームから一人上げますと Ju Delgadoというアトレティコ・デ・マドリードに所属するブラジル代表の選手です。どこのポジションも高いレベルでこなし、得点も取れます。特に、試合の重要な時間帯で得点を取れる素晴らしい選手です。人間性も兼ね備えた素晴らしい選手であるとも思います。他チームの選手ではありますが、味方からすごく信頼されているのがわかります。Juは私が目標にし、尊敬する選手の一人です。
ー 今はシーズンオフですが、どのように過ごされますか? 現在日本にご帰国中ですが。
まずは、のんびりと気ままに過ごしたいと思います。そのあとは少しずつ動き出し、知り合いのチームの練習に参加させていただこうと思っています。また、日本にいる間にたくさんの方に会って、楽しく過ごしたいです。
ー 来期に向けての目標を聞かせて下さい。
クラブチーム面では、一昨年、去年と戦うことの出来なかったカップ戦への出場権を獲得したいです。個人としては、去年よりも多く得点を取りたいですし、もっと積極的に攻撃面に関わっていきたいです。
日本代表チーム面では、まずはクラブチームでしっかりとやるべきことをやって代表に選出して頂ければと思います。来年からアジア選手権が始まるので、そこで優勝したいですね。代表チームでも攻撃面に積極的に関わって得点を取ったり、得点が生まれるようなプレーを意識したいです。
ー 5年後、10年後はどのようになっていたいと思われますか?
なかなか先のことなので、難しいのですが (笑)。5年後はまだまだ現役としてトップレベルでプレーしていたいと思います。女子フットサルではワールドカップがまだ存在しないのですが、それまでに開始していて欲しいとも思いますし、そこに出場したいという気持ちもあります。
5年間でたくさんの経験を積めるだろうと想像出来ますし、今よりももっと心身ともに成長した姿でいたいと思います。
10年後まではなかなか想像できないですね。でも、若い頃とはまた違った形かもしれませんが、チームから選手として必要とされる存在でいたいです。現役でまだまだ頑張っていたいですね (笑)。
ー 中島選手から見て、女子フットサルと言うスポーツは今後どうなって行くべきでしょうか? 期待も含めて教えて下さい。
日本にはまだ全国リーグもありませんし、全日本選手権等の全国レベルの試合でも観客数がなかなか増えて行かないのが現状です。
まだまだ認知度が低く、女子が競技としてフットサルをやっていることを知らない方もたくさんいるとは思います。しかし、今年12月にスペインで行われた国際大会「ネーションズカップ」の決勝等は超満員の観客の中、スペクタクルな試合が行われたのも事実です。
まだメジャースポーツとは言えませんが、すごく可能性を秘めているスポーツであるとも思っています。小さいコートの中で激しい攻防が繰り広げられ、展開も速く、最後の最後まで観ているほうも気が抜けない。男子のような力強さや圧倒的なスピードは女子にはないかもしれませんが、その分 戦術として崩す部分も多く、繊細な部分が多く見られるのではないかと思います。たくさんの方に見て頂き、興味をもって頂きたいと思います。そして、好きなチームや好きな選手を見つけて頂き、応援することによって選手と一緒になって女子フットサルという競技を盛り上げて欲しいなと思います。
ー 最後に、日本でフットサル選手を目指している方々にアドバイスやメッセージがあれば教えて下さい。
今は私自身なかなか日本国内でプレーすることはないのですが、国内の選手とも切磋琢磨して行きたいです。日本代表としてプレーするということも目標の一つとして掲げ、日々過ごして欲しいです。勿論、私も日本代表に入り世界と戦い勝つことを目標としていますが、選手の一人一人が、自分が入ることで代表が強くなる、世界に勝つというような意識を持つことで日本女子フットサル全体としてのレベルが上がると思います。
日本でプレーすることにもメリットはたくさんありますし、日本では成長出来ないとは全く思っていませんが、海外の国にもたくさんのレベルの高い選手がいることも事実です。私はスペインでプレーすることでたくさんのことを学びました。海外でプレーするということも一つの選択肢として考える選手が増えていけばいいなという思いもあります。
とは言え、結局どこでやっていても、努力していくことには変わりはないと思うので、みなさんとお互いに切磋琢磨して、日本の女子フットサルを盛り上げて行きたいです。
どうもありがとうございました! 今後のご活躍を期待しています!
FSFリオハ http://www.riojadiamantefsf.es