【終了】マドリードにて鬼海弘雄の個展「浅草ポートレイト」、日本国外で初めての開催。

こちらのイベントは終了しました。

鬼海が28歳の時に開始し、40年の時を経て現在も進行中のこのプロジェクト。本写真展では、東京・浅草の人々を撮影した600点以上の写真のなかから、55点のモノクロ作品が展示されている。

鬼海が撮影対象に選ぶのは無名の人々である。浅草寺の剥き出しの壁の前でポーズをとる通行人。それらの写真は、彼らの個性や気質をありありと映し出す。
スペイン教育文化スポーツ省美術振興副執行局主催の本写真展は、2014年11月19日まで、日本国外で初めてマドリードのLA FRAGUA. TABACALERA PROMOCIÓN DEL ARTEで開催されている。

本展で展示される写真の多くは、彼の12番目の写真集「Asakusa Portrait（浅草の肖像）」（Steidl、2008年）に掲載されたものである。

鬼海弘雄（きかい・ひろお）

1945年生まれ。山形県の農家の両親のもとに、8人兄弟の末っ子として生まれた。18歳のときに山形県職員として就職。法政大学で哲学を学んだ後、マグロ漁師、トラック運転手や工場労働者など様々な職業についたが、ニューヨークの写真家ダイアン・アーバスの作品に出会ったことがきっかけで、1969年に写真の道に進んだ。

1973年、28歳の時に東京の浅草で人々を撮り始めた。そして今も進行中のこのプロジェクトのために鬼海が撮影したポートレイト写真は、すでに600点以上に及ぶ。

『浅草ポートレイト』

鬼海は自身のテーマを、人の行き交う通りから切り取り、浅草寺の剥き出しの壁の前で映し出す。それは厳格で、強烈で、安らぎはないが、愛に溢れている。彼の肖像写真からは、勝者の厳しさと浅草ならではの個性をどちらも感じ取れる。

写真には、鬼海自身によって、その人物の（時におもしろおかしい）描写が加えられる。
鬼海弘雄の「浅草ポートレイト」に結集するのは、古典的な瞑想から時間を超えた複雑な人間の性質まで様々である。

　日本舞踊のインストラクター（1986年）

　遠くから歩いてきたという青年（1999年）

　目の鋭い老人（2001年）

　笑うおばあちゃん（1986年）

　体を鍛えた美容師（2001年）

写真展開催に際して、鬼海弘雄と、本展の企画を務めた福のり子との対談を紹介する冊子が本写真展の会場で無料配布されている。
写真展開催に際して行われた対談の一部の紹介：

福のり子：浅草にいれば、何千人もの人々があなたの近くを通りかかりますよね。この多くの人々の中から、どのような基準で写真の被写体となる方を選ぶのですか？

鬼海弘雄：僕が彼らを見ていると、突然「ぜひ私を撮って」というオーラに包まれる人たちがいます。それは測定することも言葉することもできませんが、大勢の人々の中であってもそのオーラははっきりと見ることができます。僕が探しているのは、ただ単純に、見過ごしてはいけない、と感じさせる人々です。

また第二の自分を探しているような感覚もあります。この肖像写真のシリーズに入る人々を見ていると、なぜかだんだん私に似ている人が増えてきているのです。シャッターを押すのは、相撲の取組を始めるようなものです。相手を近くから観察して、決め手となる動きを取ります。「のこった！」の掛け声で踏み出さなければならないのです。（以下略）