【終了】新藤兼人 監督作品、バルセロナにて上映
この1月、国際交流基金とFilmoteca de Catalunyaの企画により、新藤兼人監督の16作品、「原爆の子」「縮図」「どぶ」「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録」「第五福竜丸」「裸の島」「母」「鬼婆」「裸の十九歳」「竹山ひとり旅」「落葉樹」「墨東綺譚」「午後の遺言状」「生きたい」「三文役者」「ふくろう」がバルセロナにて上映される。
映画監督
新藤 兼人(しんどう かねと)
1912年生まれ。
48本の映画を監督し、238本もの脚本を手がけるなど、映画監督、脚本家として活動。
とりわけ「原爆の子」「裸の島」「鬼婆」「藪の中の黒猫」「午後の遺言状」などの作品が有名である。
広島出身であるため、広島や原爆に関する様々な作品を制作した。近代映画協会の設立者でもあり、日本のインディペンデント映画の先駆者としても知られている。
2012年逝去。
原爆の子 (Children of Hiroshima)
2016年1月1日(金) 19:30〜 (Sala Chomón)
2016年1月9日(土) 21:30〜 (Sala Laya)
1952年 / 96分
キャスト:乙羽信子、細川ちか子、清水将夫、滝沢修、宇野重吉、大滝秀治、北林谷栄
Youtube:Canal de borjaargh「Children of Hiroshima (1952)」
原爆を取り上げた戦後初の日本映画と言われるこの作品は、被爆から7年後に制作された。
長田新が編んだ作文集「原爆の子 – 広島の少年少女のうったえ」を元に、新藤兼人が脚本・監督。
広島の幼稚園で働いている最中に被爆し、家族のなかでひとり生き残った石川孝子(乙羽信子)。
戦後、瀬戸内海の小島で小学校教師として働いていたが、原爆投下から7年後の夏に故郷広島を訪ね、原爆被災時に働いていた幼稚園の園児たちを訪問した。
生き残った3人の教え子たちは中学生になっていたが、三平は原爆症で父を亡くし、敏子は原爆症で病床に臥せ、平太は両親を亡くし兄姉と暮らしていた…。
縮図 (Epitome)
2016年1月2日(土) 18:45〜 (Sala Laya)
2016年1月5日(水) 21:30〜 (Sala Laya)
1953年 / 130分
キャスト:乙羽信子、宇野重吉、北林谷栄
50年にわたる小説家 徳田秋声文学の集大成、最後の長編小説を原作として、新藤兼人が監督した長編劇映画。
白山で置屋を営む元芸者の小林政子をモデルとした、芸者の世界を描いた。
東京下町の貧しい靴直し職人の家に生まれた銀子(乙羽信子)は、一家の生計を助けるため千葉の芸者置屋に売られていった。
やがて彼女は「牡丹」という名で座敷へ出された。女癖の悪い置屋の親爺磯貝に目をつけられ、追いまわされるが、銀子には千葉医大の医師栗栖という意中の人が出来た。磯貝は恐い女房に死なれてからは銀子に対する態度が一層露骨になり、連日の如くに責め折檻をした。これを救いに来たのは父の銀蔵だった。栗栖のことも忘れて東京へ戻って来たものの、家は貧しく、更に父が病気に倒れ、銀子は今度は東北の或る町へ再び身売りした…。
どぶ (The Ditch)
2016年1月3日(日) 16:30〜 (Sala Laya)
2016年1月12日(火) 21:30〜 (Sala Laya)
1954年 / 112分
キャスト:乙羽信子、宇野重吉、殿山泰司
終戦直後の横浜市鶴見区にあったバラック集落を、新藤監督みずからが取材し映画化。
河童沼のほとりのバラック作りのルンペン集落に住む知的障害のある若い女ツル(乙羽信子)を取り巻く、博打好きの男、新興宗教にすがる老婆、元新劇の名優だったと自称する男、それぞれの人生模様を描く。
ある映画監督の生涯 溝口健二の記録 (Kenji Mizoguchi, The Life of a Film Director)
2016年1月5日(火) 17:00〜 (Sala Chomón)
2016年1月6日(水) 18:30〜 (Sala Laya)
1975年 / 150分 / ドキュメンタリー
黒澤明、小津安二郎、成瀬巳喜男と並び、国際的に高い評価を受けた映画監督である溝口健二は、虐げられた女性の姿をリアリズムで描き、女性映画の巨匠と呼ばれた。
溝口健二と一緒に仕事をしたことのある39人の俳優やスタッフ、友人に対し、溝口を師と仰ぐ新藤兼人監督が自らインタビューした長編ドキュメンタリー。
インタビュー出演者には、入江たか子、田中絹代、木暮実千代、京マチ子、香川京子、若尾文子、乙羽信子、宮川一夫、山田五十鈴、その他多数のスターたちが出演。
第五福竜丸 (Lucky Dragon No5)
2016年1月3日(日) 19:00〜 (Sala Chomón)
2016年1月7日(木) 21:30〜 (Sala Laya)
1959年 / 106分
キャスト:宇野重吉、乙羽信子、稲葉義男
1954年3月1日、ビキニ環礁で行われたアメリカ合衆国による水爆実験で被爆した、第五福竜丸と23人の船員たちの被害事件の悲劇をドキュメンタリーで描いた作品。
焼津港から遠洋漁業に出ていたマグロ漁船 第五福竜丸は、魚を求めてビキニ環礁のあたりにいた。3月1日午前3時42分、乗組員たちは夜明け前の暗やみの中に白黄色の大きな火の柱が天に向ってたちのぼるのを目撃する。6〜7分後、大爆音があたりをゆるがせて響いた。ビキニ環礁で米国の専門家たちによって行われた水爆実験であった。立入禁止区域外にいて、何も知らなかった一同の頭上に、やがて真白な死の灰が降りそそいだ。3日後、船員たちは灰のついた部分の皮膚が黒色に変り、身体に変調が生じたのに気づいた…。
裸の島 (La isla desnuda)
2016年1月7日(木) 17:00〜 (Sala Chomón)
2016年1月10日(日) 19:30〜 (Sala Laya)
1960年 / 95分
キャスト:乙羽信子、殿山泰司、田中伸二
Youtube:FilmDeCulte「L’Île nue (Kaneto Shindo) – bande annonce」
セリフをいっさい排し映像だけで語るサイレント映画。孤島で自然と闘いながら自給自足で生きていく家族の葛藤を描いている。
瀬戸内海、電気・ガス・水道がない周囲約500mの小島に、家族4人が自給自足で暮らしていた。子供二人も両親を助け家事を手伝っている。
夫婦の日課は、隣島まで小舟を漕いで飲料と作物のための水を汲みに行くことだった。
ある暑い日の午後、突然長男が発病した。孤島へ医者が駆け付けるも、すでに死んでいた…。
母 (Mother)
2016年1月8日(金) 19:00〜 (Sala Laya)
2016年1月14日(木) 17:00〜 (Sala Chomón)
1963年 / 101分
キャスト:乙羽信子、杉村春子、殿山泰司、佐藤慶、加藤武
戦後の広島を舞台に、様々な困難や逆境から愛に目覚め、新たな生命を育んでいくひとりの女の生き方を描いた作品。
32歳の吉田民子(乙羽信子)は二度目の夫から逃れるように、息子の利夫をつれて飛び出したが、息子を病魔が襲う。利夫は脳腫瘍と診断されたのだ。
民子は母の芳枝(杉村春子)に手術代を無心したつれなく断られ、はては「もう一度結婚して男から金を出して貰え」と言う。
民子は田島(殿山泰司)という韓国人の印刷屋と三度目の結婚をした。田島は母子に優しかった。完全に治癒したと思っていた利夫の病気が又再発した。田島の「一日でも永く生かしてやりたい、出来るだけ治療してやろう」という言葉に民子ははじめて田島に深く心を打たれるのであった…。
鬼婆 (Onibaba)
2016年1月13日(水) 20:30〜 (Sala Chomón)
2016年1月16日(土) 19:30〜 (Sala Chomón)
1964年 / 103分
キャスト:乙羽信子、吉村実子、宇野重吉、殿山泰司、佐藤慶
Youtube:Jean-Bernard Thomasson「Onibaba 1964 Trailer」
時は南北朝、戦乱にふみにじられた民衆は飢え、都は荒廃し民は流亡した。芒ケ原に棲む中年女(乙羽信子)とその息子の嫁(吉村実子)は、芒ケ原に流れてくる落武者を殺し、武具類を奪っては武器商人の牛に売って生活を支えていた。それは戦争に男手をとられた彼女たちの唯一の生活手段であった。
戦場から帰った八(佐藤慶)によって、女の息子が死んだと告げられた息子の嫁は、八と逢びきを重ね始める。中年の女は、働き手を奪われる怖れと嫉妬から、嫁をひきとめようとしたが効き目がなかった。
ある夜、中年女は鬼の面をつけた敗将を芒ケ原の大穴に突き落してその鬼面を奪う。芒ケ原に鬼が出没し始めた…。
裸の十九歳 (Live Today, Die Tomorrow!)
2016年1月15日(金) 21:30〜 (Sala Laya)
2016年1月17日(日) 16:30〜 (Sala Laya)
1970年 / 120分
キャスト:原田大二郎、乙羽信子、草野大悟、鳥居恵子、佐藤慶
地方から上京した少年が都会の孤独の中で次第に転落していく、実際に起きた十九才による連続射殺事件を基に新藤兼人監督が忠実に映画化。
青森県細柳で貧しく育った山田道夫(原田大二郎)は、集団就職で上京した。だが大都会の殺伐とした雰囲気についていけず、孤独感にさいなまれ、職を転々とし、徐々に脱落の一途をたどった。
もはや行き場のない道夫を支えるものは、かつて横須賀基地から盗んだ拳銃だけ。ある日、道夫は華やかさに導かれるようにホテルの庭へと忍び込み、ガードマンに襟首をとらえられた時、無我夢中で引き金を引いた…。
竹山ひとり旅 (The Life of Chikuzan)
2016年1月19日(火) 21:30〜 (Sala Laya)
2016年1月23日(土) 21:30〜 (Sala Laya)
1977年 / 124分
キャスト:林隆三、乙羽信子、倍賞美津子、川谷拓三
Youtube:kinosita123「2011-0141」
3歳で失明してしまった津軽三味線の名人 高橋竹山自身の語りと、林隆三が彼に扮する再現ドラマで構成される竹山の半生を描く伝記映画。モスクワ国際映画祭監督賞受賞作。
高橋竹山(林隆三)、本名 定蔵は三歳の時に麻疹をこじらせ半失明となる。他の子供たちと同じ様に勉強ができないため小学校も途中で退学。15歳になった時、行く末を心配した母により、隣村のボザマ戸田重太郎の弟子として住み込みボザマから三味線と唄を習い、青森、秋田、北海道などをまわった。
17歳で独立した定蔵は、青森の十日町に社会の底辺に生きる芸人や貧しさの中にも、明るく生きる人々がいることを知る。定蔵は、船小屋や山小屋で寝、ひとりの時はかならず、三味線の練習をするのであった。定蔵の三味線は、貧しさと闘い、生きつづけるなかで、しだいに鍛えられていった。その後、八戸の盲唖学校へ入学。そして、戦後の25年、成田雲竹の伴奏者となり、41歳にして竹山の号をもらう。
落葉樹 (Deciduous Tree)
2016年1月20日(水) 21:30〜 (Sala Laya)
2016年1月21日(木) 17:00〜 (Sala Chomón)
1986年 / 105分
キャスト:乙羽信子、小林桂樹、財津一郎、梶芽衣子、大滝秀治
Youtube:Obaba84 “Rakuyôju” (“Tree without leaves”) – Kaneto Shindô [1986] – trailer
冬の蓼科高原で、初老の作家(小林桂樹)は裕福だった子供の頃のことを思い出していた。
父(財津一郎)は他人の借金の保証人となり、会社をたたむこととなってしまう。借金はやがて一家離散の原因となり、返済のために家族は父に土地を手放すことを勧めるが、先祖に申し訳ないからと土地をなかなか手放そうとはしなかった。そのことに我慢ができず、兄は家を出て行ってしまう。しぶしぶ土地を売り、その場をしのぐものの借金は増え続ける。姉は少しでも家計を助けるためアメリカ移民と結婚する。母(乙羽信子)は家が残っている間に兄を結婚させようと、屋敷で盛大な婚礼を執り行う。そしてついに家を手放す日が来る…。
墨東綺譚 (The Strange Story of Oyuki)
2016年1月22日(金) 21:30〜 (Sala Laya)
2016年1月24日(日) 19:30〜 (Sala Laya)
1992年 / 116分
キャスト:津川雅彦、墨田ユキ、宮崎美子、乙羽信子
Youtube:OdessaEntertainment「墨東綺譚」
名匠・新藤兼人監督が、永井荷風の同名小説を基に、主人公を荷風本人に置き換え、玉ノ井の娼婦・お雪とのロマンスを中心に荷風の半生を描いた官能美あふれるドラマ。
1879年、良家の長男として生まれ育った荷風。父の意向に反し、早くから文学の道を志した荷風は、やがて玉ノ井の娼家でお雪と出会う。世の中の底辺に生きながらも清らかな心を持つお雪に、荷風は運命的なものを感じ、57歳にしてついに結婚の約束をする。が、東京大空襲に見舞われた2人は離れ離れとなってしまう…。
午後の遺言状 (A Last Note)
2016年1月26日(火) 18:30〜 (Sala Laya)
2016年1月27日(水) 21:30〜 (Sala Laya)
1995年 / 112分
キャスト:乙羽信子、杉山春子、観世栄夫、津川雅彦、倍賞美津子、朝霧鏡子
Youtube:OdessaEntertainment「午後の遺言状」
老齢の女優蓉子は避暑のために、山間の別荘に滞在する。そこで、人間の老いと死や夫婦に関わる事件に次々と遭遇する。奇妙な短い遺言とともに大きな石を残した用意の良い老人の自殺、重度の認知症になったかつての女優仲間と、献身的に看護するその夫との再会と別れ、亡き夫の思わぬ人物との不倫、義理の娘の結婚など…。その度に蓉子は元気付けられたり、落ち込んだり、自身の死について考えたりする。
生きたい (Will to Live)
2016年1月27日(水) 18:30〜 (Sala Laya)
2016年1月29日(金) 21:30〜 (Sala Laya)
1999年 / 119分
キャスト:三國連太郎、大竹しのぶ、柄本明
Youtube:劇場予告/ 映画「生きたい」劇場予告
姥捨て山伝説と現代の高齢化社会における老人がおかれた現状を交錯させ、ユーモラスなタッチで描かれた “老い” がテーマの社会派人間ドラマ。
70歳の安吉は、妻に先立たれ、40歳になる嫁ぎ遅れの長女・徳子と暮らしている。長男、次女は家を捨てたも同然で別居しており、躁鬱病の徳子だけが父の世話をしている。徳子は自分が婚期を逃したのも病気になったのも父のせいと主張するも、家を出ることができずにいる。
三文役者 (By Player)
2016年1月28日(木) 21:30〜 (Sala Laya)
2016年1月31日(日) 16:30〜 (Sala Laya)
2000年 / 126分
キャスト:竹中直人、荻野目慶子、吉田日出子、乙羽信子
Youtube:OdessaEntertainment「三文役者」
戦後の日本映画界に貴重なバイふレイヤーとして活躍した “タイちゃん” こと殿山泰司(とのやま たいじ)。
自らを「三文役者」と称し、酒と女そしてジャズとミステリー小説を愛した役者人生。長年映画製作の同志であった新藤兼人監督による、殿山の生きざまを映画化した作品。
タイちゃん(竹中直人)は、京都の喫茶店フランソワで、17歳のウエイトレス・キミエ(荻野目慶子)と出会い、相思相愛となる。しかし、タイちゃんにはすでに内縁の妻アサコ(吉田日出子)がいた。そこで女優のおカジ(乙羽信子)にアサコとの別れ話を仲裁してもらうも、アサコは区役所へタイちゃんとの婚姻届を出し、さらに養女を迎えてしまった。東京で同棲を始めたタイちゃんとキミエは、負けじと甥(兄の息子)を養子に迎える…。
ふくろう (The Owl)
2016年1月29日(金) 19:00〜 (Sala Laya)
2016年1月30日(土) 21:30〜 (Sala Laya)
2003年 / 119分
キャスト:大竹しのぶ、伊藤歩、木場勝己、榎本明、原田大二郎
Youtube:OdessaEntertainment「ふくろう」
1980年頃、満州から引き揚げ東北地方の山奥にある希望ヶ丘開拓村に入植したものの、土地は不毛で村人たちは次々に出て行ってしまう。出稼ぎに行った夫にも見捨てられ、たったふたり村に取り残されたユミエ(大竹しのぶ)と17歳になる娘のエミコ(伊藤歩)は、激しい飢えに苦み、限界を感じた二人はある決意をする。
山向こうのダム工事現場で働いている男らを呼んで春を売っては、毒入り焼酎を飲ませて殺害し、現金を巻き上げるのだ。
脱出目標金額までもう少しとなったある晩、県の引揚援護課に勤める若者と麓の巡査、更に一旦は村を出たエミコの初恋の少年 浩二が鉢合わせる。しかも、浩二が殺人犯として手配中だったことから、巡査ともめてしまう。3人の男たちと母娘は、壮絶な殺し合いを演じるのだった…。
1年後、村からの脱出に成功した母娘家の裏庭より、9体の白骨遺体が発見される。ここで何があったのか? 今となっては、全てを知るのは森の主である梟だけである。
新藤兼人監督 作品上映
上映会場:Filmoteca de Catalunya
住所:Plaça de Salvador Seguí, 1-9 08001 Barcelona
TEL:935 67 10 70