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9月19日、20日の週末、マドリードのカサ・デ・カンポ見本市会場にて、第8回ジャパン・ウィークエンド・マドリードが開催された

 

 
sep2014_jw_1本イベントは、日本文化、特にマンガやアニメ、ゲームの世界に親しむ多くの愛好家を魅了。武術や指圧マッサージのデモンストレーション、マンガ文化のプロモーションなど、日本のポップカルチャーや伝統文化が紹介された。

またカンファレンス、コンクール、商品販売用のブースも充実し、イベントは大成功であったと言えるだろう。

 
ESJAPON編集者は、土曜日に開催された多くのカンファレンスに参加したが、それらの中から講談社、アナベル・エスパダ氏、マルク・ベルナベ氏の講演を紹介しよう。

sep2014_jw_2Norma Editorial出版社主催により招待された、講談社のマーケティング責任者である北岡森生氏が講演を行った。同氏はマルク・ベルナベ氏の通訳により、同出版社の、特に人気シリーズ「進撃の巨人」のプロモーション戦略について語った。
氏曰く、日本では通常、シリーズのプロモーションにあたり、消費者の関心を引くために趣向を凝らしたイベントを実施することが好まれる。例えば、トラックやバスにラッピング広告を施したり、音楽を使った宣伝などを行う。

「進撃の巨人」第11巻の出版に際しては、砂の彫刻家 “サンドアーティスト” 保坂俊彦とコラボレーションし、シリーズ第1巻の表紙を模した巨大な彫刻を制作した。参照:進撃の巨人 サンドアート (Youtube)

また今年川崎市で開催されたイベントでは、ビル壁面に高さ60メートルもの巨大なアニメーションを投影し、イベント参加者数記録を更新したとのこと。
北岡氏は、Norma Editorialの協力によって、「進撃の巨人」に登場する巨人の大きな頭を運び込み、日本特有のプロモーションを一部紹介することができて大満足の様子であった。

 

 
sep2014_jw_3その後、Norma Editorialのマンガ担当編集者であるアナベル・エスパダ氏は、スペインの出版業界についての講演を行った。

自分のお気に入りのシリーズを自国語で出版して欲しいと希望する読者は多く、彼らは出版社にそれらの作品の出版の権利を交渉するように要望する。その点について、アナベル・エスパダは、Norma Editorialが出版する作品を選ぶプロセスを説明した。

第一に、作品を選ぶにあたって、その作者がすでによく知られているか、以前にその作者の作品を出版したことがあるかどうかはかなり重要な点である。例えば、「鋼の錬金術師」の作者である荒川弘は、Norma Editorialを通してすでに多くの作品を出版している。また、読者の希望にも注意を払い、集計をとって一番票の多かった作品は重要な出版作の候補となる。

彼女が強調したのは、ひとつのシリーズの交渉プロセスは決して速やかには行われないことである。つまり、日本の出版社にとっては、スペインというマーケットの重要性がそれほど高くない。アナベルは、日本の出版社が、自身の作品が海外で出版される際に、いかに装丁、プロモーションなどが満足いくものになっているかを重要視するかについても解説した。

 

 
sep2014_jw_18最後に、マンガやアニメの翻訳家であるマルク・ベルナベは、マンガの翻訳の難しさについて、実に興味深く、日本語学習者にも役に立つ話をしてくれた。

どんな文学作品でも、翻訳家の人柄は非常に重要である。マンガの翻訳においても、その重要性は変わらず、さらに、翻訳家を悩ませる多くの壁が存在する。例えば、これらの作品の対象となる読者層について考えるなら、彼らの文化的背景についても考えなければいけない。もともとこれらのマンガが対象とする読者層は日本人であり、多くのマンガの背景は日本文化である。これは翻訳家にとって頭を抱えたくなる問題だが、解決策は複数ある。そのマンガを誰が読むかによって、訳者による注釈を加えるか、この文化に関する内容を「西洋化」するか、言及するのをやめるかを決めるとのこと。

マンガの「西洋化」は、対話部分の翻訳に限定されるものではない。スペインの慣習に合わせて読む方向を変えるために絵を逆向きにしたり、擬声語を書き直したりすることもある。しかし、こういった要素もマンガの一部であり、マンガ家の作品の一部であるから、現在はこれらに変更を加えない傾向にあるようだ。

日本語という言語だけ見ても文法的に異なる構造をしており、ひとつの壁と言える。日本語には複数形や性がないため、翻訳家は自身の経験や知識、感覚を総動員して良い翻訳を作り出していく。ベルナベの言葉を借りて言えば、翻訳家の任務は、翻訳版の読者に、原文で読むのと近い感覚を味わってもらうことである。

 
sep2014_jw_15本イベントでは、カンファレンス以外にも様々な体験ができ、武術のデモンストレーションはAsociación Aikido Osaka Buikukai Españaの協力により実現された。

参加者は、自分のお気に入りの作品を題材に、手の込んだコスプレで会場を盛り上げてくれた。さらに「マジンガーZ」シリーズなどの作詞家・歌手であるアルフレド・ガリド・ガルシアやプロのコスプレイヤーである麗華 (REIKA)が招待され、どちらもファンへのサイン会では長蛇の列ができていた。本イベントには、最近話題のセーラー服おじさん(小林秀章)も参加し、写真を撮りたい人々に囲まれていた。

さらに、Selecta Visiónより、新規ライセンス契約についての発表があった。映画「ルパン三世 カリオストロの城」のデジタルリマスター版製作、「ソードアート・オンライン」第1シーズン、映画「ベルセルク」第3作目、ベヨネッタのフランチャイズ映画第一弾である「ベヨネッタ・ブラッディフェイト」である。

本イベントはここ数年大盛況。今年も賞賛に値する招待者の参加があり、商品販売ブースや文化交流ブースも、このイベントに積極的に参加。そして何より、参加者の応援のおかげで、来年の開催も期待できそうだ。