[サン・セバスティアン] 第71回サン・セバスティアン国際映画祭にて多数の日本映画がノミネート上映
スペイン北部のバスク州サン・セバスティアンで毎年開催されているスペイン最大の国際映画祭サン・セバスティアン国際映画祭 (Festival Internacional de cine de Donostia-San Sebastián)が、2023年9月22日〜30日の9日間にわたり今年も開催される。
71回目の開催となる今年、映画祭に正式出品される日本映画作品は、監督が自らの少年時代を重ねた自伝的要素を含むオリジナル・ストーリーを描いた宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」、国内外で高く評価される新鋭・近浦啓監督の「大いなる不在」の2作品がオフィシャル・セレクション部門の正式出品作品にノミネートされた。
同映画祭の最も名誉ある賞、生涯功労賞にあたる「ドノスティア賞」が、今年は宮崎駿監督とスペインの巨匠ビクトル・エリセ監督に授与されることも8日に発表されている。この賞は2018年に是枝裕和監督がアジア人として初めて受賞している。宮崎駿監督の10年ぶりとなる長編アニメ映画「君たちはどう生きるか」は、今年の映画祭オープニング作品として上映されることが決まっており、これが欧州でのプレミア上映となる。
そして、世界の映画祭で話題となりその年を代表するような作品を上映するパール部門にノミネートしたのは、東京にほど近い村で自然の秩序に従ってつつましく暮らす父娘を軸にした濱口竜介監督の「悪は存在しない」、登場人物それぞれの視線を通した怪物探しの果てに訪れる結末を描いた是枝裕和監督の「怪物」、渋谷を舞台にトイレの清掃員の男が送る日々の小さな揺らぎをドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース監督が描いた「Perfect Days」の3作品。
ベルリンやカンヌなど世界的な映画祭の話題作やあらゆるジャンルで新しいことに挑戦する作品を上映するサバルテギ=タバカレラ部門にノミネートされたのは、多摩ニュータウンですれ違う三人の女性たちのある一日を描いた清原惟監督作品「すべての夜を思いだす」、五十嵐耕平監督による短編作品「水魚之交」、故郷の富山を舞台に銭湯を舞台に撮影した平井敦士監督による短編映画「おゆ」の3作品。
新人監督部門にノミネートされたのは、奈良県南東部の山々に囲まれたある静かな集落で老舗旅館を営む家族の物語を描いた村瀬大智監督による「霧の淵」。世界中の映画学校学生の作品より選出されるネスト部門には、森美春監督による短編作品「逃避行」がノミネートした。子供映画部門では、監督・今井一暁 、脚本・川村元気による「映画ドラえもん のび太の新恐竜」がノミネート上映される。往年の名作を愛する観客のために2018年に設立されたクラシック部門では、増村保造監督作品「赤い天使」、小津安二郎監督作品「長屋紳士録」の2作品が上映される。
そして特筆すべきは、1959年にフランス映画界の巨匠ルネ・クレールに捧げられて以降、この映画祭のアイデンティティを形成してきた回顧部門にて、今年は日本の映画監督であり様々な分野で活躍した芸術家、勅使河原宏が手がけた20作品が上映される。
オフィシャル・セレクション
映画祭オープニング上映作品
君たちはどう生きるか (The Boy And The Heron)
2023年9月22日〜23日 上映の詳細はこちら
原作・脚本・監督:宮崎駿 / 2023年 / 124分
宮崎駿監督による10年ぶりの長編アニメーション。監督が自らの少年時代を重ねた自伝的要素を含むオリジナル・ストーリー。
母親を火事で失った少年・眞人は父と共に東京を離れ「青鷺屋敷」と呼ばれる広大なお屋敷に引っ越してくる。亡き母の妹であり、新たな母親になった夏子に対して複雑な感情を抱き、転校先の学校でも孤立した日々を送る眞人。そんな彼の前にある日、鳥と人間の姿を行き来する不思議な青サギが現れる。その青サギに導かれ、眞人は生と死が渾然一体となった世界に迷い込んでいく。(映画.com)
大いなる不在 (Great Absence)
2023年9月28日〜30日 上映の詳細はこちら
監督:近浦啓 / 2023年 / 152分
俳優のタカシは、20年前に母親と離婚して以来、大学教授を引退した父親のヨウジと疎遠になっていた。二人はかろうじて連絡を取り合っていたが、ある日の警察からの連絡をきっかけに、タカシは認知症とたたかっているヨウジの自宅を訪ねることになる。到着したタカシは、ヨウジの後妻であるナオミが失踪していることに気が付く。どこにいるのか問われたヨウジは、自殺したと答えた。タカシは父の言葉が真実であるのかどうかを確かめなければならない。
Youtube:TIFF Trailers / GREAT ABSENCE Trailer | TIFF 2023
パールズ部門
世界の映画祭を賑わせ話題となった、その年を代表するような作品を上映する部門。スペインではまだ未発表の、今年のすぐれた映画が上映される。*コンペティションではないため観客賞のみ受賞対象となる。過去、同部門に出品された是枝監督作「そして父になる」「海街diary」はそれぞれ観客賞を受賞している。
悪は存在しない (El Mal No Existe)
2023年9月27日〜30日 上映の詳細はこちら
企画・監督・脚本:濱口竜介 / 2023年 / 106分
「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督による最新作。東京にほど近い村で自然の秩序に従ってつつましく暮らす父娘を軸にした物語。ある日、村の住人たちは都会に住む人々に快適な「自然への逃避」を提供するグランピングサイトの建設計画を知る。東京からやって来た企業担当者が会議を開くと、このプロジェクトが地元の水の供給に悪影響を及ぼすことが明らかになり村は騒然。父娘の人生にも大きな影響を与えていく。
怪物 (Monster)
2023年9月23日〜25日 上映の詳細はこちら
監督・編集:是枝裕和 / 脚本:坂元裕二 / 2023年 / 126分
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。それは、よくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した――。
公式サイト | X (Twitter) | Instagram
Youtube:ギャガ公式チャンネル / 映画『怪物』15秒CM(ストーリー篇)大ヒット上映中‼
Perfect Days
2023年9月22日〜23日 上映の詳細はこちら
監督:ヴィム・ヴェンダース / 2023年 / 123分
ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースが、役所広司を主演に迎え、東京・渋谷を舞台にトイレの清掃員の男が送る日々の小さな揺らぎを描いた日本とドイツのドラマ映画。
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり、人生は風に揺れる木のようでもあった。そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかのように木々の写真を撮っていた。そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。
公式サイト
Youtube:The Match Factory / PERFECT DAYS (2023) | Trailer | Wim Wenders | Koji Yakusho | Tokio Emoto | Arisa Nakano
新人監督部門
霧の淵 (Beyond the Fog)
2023年9月29、30日 上映の詳細はこちら
監督:村瀬大智 / 2023年 / 83分
奈良県南東部の山々に囲まれたある静かな集落。かつては商店や旅館が軒を並べ、登山客などで賑わったこの集落で、代々旅館を営む家に生まれた12歳の少女いひか。数年前から父は別居をしているが、父との結婚を機に嫁いだ母の咲と、祖父シゲがこの旅館を切り盛りしている。そんなある日、シゲが姿を消してしまう。旅館存続の危機が迫るなか、いひかの家族に変化の時がやってくる。
ザバルテギ=タバカレラ部門
すべての夜を思いだす (Remembering Every Night)
2023年9月22、23日 上映の詳細はこちら
監督・脚本:清原惟 / 2023年 / 116分
多摩ニュータウンですれ違う三人の女性たち。誰かにとって大切な記憶が、他の誰かの一日と呼応する。街に積み重なる時間のあと痕跡に触れ、小さな変化が起きていく、ある一日の物語。
Youtube:NipponConnectionTV / Remembering Every Night『すべての夜を思いだす』 Official Film Trailer | Nippon Connection Filmfestival 2023
水魚之交 (Two of US)
2023年9月23〜25日 上映の詳細はこちら
監督:五十嵐耕平 / 2023年 / 20分
幼なじみの佐野と宮田は太平洋に面したリゾート地で一緒に旅行をしている。宮田は陰謀論に取りつかれ、佐野に自分の考えを信じさせようとする。しかし佐野はそれを受け入れず二人は口論になる。宮田の電話が一日中鳴り続け、佐野は堪忍袋の緒が切れて電話に出る。認知症なのか、訳のわからないことを言う宮田の父親だった。佐野は混乱したまま電話を切り、宮田を連れて家に帰ろうとする。
おゆ (Oyu)
2023年9月23〜25日 上映の詳細はこちら
監督:平井敦士 / 2023年 / 22分
大晦日の夜。東京に暮らす智は、実家の母親の部屋で見つけた回数券を手に銭湯にやってくる。40年ぶりに訪れた銭湯には、人々の生活と人生があった。再会、別れ、家族、孤独。近所の人が集うその場所で、智は懐かしい日常に出会う。そんな中、身寄りのないおばあさんがのぼせて倒れてしまう...。
ネスト部門
世界中の映画学校の学生より作品を集め、専門家によるマスタークラスにてディスカッションが開催され、ネスト・フィルム・ストゥーデント最優秀短編映画賞を決定する。
逃避行 (Escape)
2023年9月28日 上映の詳細はこちら
監督:森美春 / 2023年 / 14分
ミツル、ゴー、アズマの3人は公園でリモコンカーで遊んでいた。突然、工事現場の作業員たちが彼らを追いかけ始め、彼らは街中を逃げ回る。3人は離れ離れになり、見知らぬ場所にたどり着く。
子供映画部門
映画ドラえもん のび太の新恐竜 (Doraemon Movie: Nuevo Dinosaurio de Nobita)
2023年9月23日 上映の詳細はこちら
監督:今井一暁 / 脚本:川村元気 / 2023年 / 106分
のび太が恐竜博の化石発掘体験で見つけたひとつの化石。絶対に恐竜のたまごだ!と信じたのび太が、ドラえもんのひみつ道具タイムふろしきで化石を元の状態に戻すと… 生まれたのは双子の恐竜!しかも、未発見の新種だった。のび太に似てちょっと頼りないキューと、おてんばなミュー。個性の違いに苦労しながら、親のように愛情たっぷりに育てるのび太だったが、やがて2匹が現代で生きていくには限界がきてしまう。キューとミューを元の時代に返すことを決心したのび太は、ドラえもんや仲間たちと共に6600万年前へと出発!キューやミューの仲間の恐竜たちを探す旅が始まった。
Youtube:DoraemonTheMovie / 『映画ドラえもん のび太の新恐竜』TVCM 大ヒット上映中篇 その1
クラシック部門
赤い天使 (The Red Angel)
2023年9月24日 上映の詳細はこちら
監督:増村保造 / 1966年 / 95分
日中戦争が激しくなるなか、西さくらは天津の陸軍病院に従軍看護師として配属される。だが、そこで入院中の傷病兵たちにレイプされてしまう。西はそんな状況でも冷静さを失わず、手術や治療を続ける岡部軍医に心を惹かれるが、彼はモルヒネを常用していた…。 (Filmarks)
Youtube:KADOKAWA映画 / 【大映4K映画祭/赤い天使】特別映像
長屋紳士録 (Historia de un Vecindario)
2023年9月23日 上映の詳細はこちら
監督:小津安二郎 / 1947年 / 71分
飾り職人の為吉が酒を飲んでいると、同居人である大道占師の田与が、7、8歳の男の子・幸平を連れて来た。その子は親にはぐれて田与についてきたのだという。田与は向かいに住む荒物屋のおたねに強引に預けてしまう。翌日、おたねは、幸平の引き取り手を探すが、誰も受け入れてくれない。人々はグチをこぼしながらも、幸平を親しくなり、貧乏長屋になくてはならない存在となっていく。しかし、ある日父親が姿を現した。 (Filmarks)
回顧部門『勅使河原宏』
第71回サン・セバスティアン国際映画祭の古典映画シリーズでは、日本の偉大な映画監督、勅使河原宏監督に捧げる回顧上映会にて20作品の上映を予定
Youtube:sansebastianfestival / Retrospectiva Hiroshi Teshigahara #71ssiff
北斎 (Hokusai)
2023年9月22日、26日 上映の詳細はこちら
1955年 / 23分
江戸時代に活躍した浮世絵の巨匠・葛飾北斎の作品の生涯と仕事をたどった短編ドキュメンタリー作品。
十二人の写真家 (Doce fotógrafos)
2023年9月22日、26日 上映の詳細はこちら
1955年 / 49分
1950年代の日本。激動の時代の中で、写真家に求められる役割や写真をめぐる状況も大きく変化しようとしていた。カメラは当時の最前線で活躍する木村伊兵衛、林忠彦、渡辺義雄ら若き写真家たちの姿を映し出していく。雑誌の企画として製作されたドキュメンタリー。
蒼風とオブジェ いけばな (Ikebana)
2023年9月22日、26日 上映の詳細はこちら
1957年 / 35分
いけばな草月流の創始者・勅使河原蒼風とその作風を追ったドキュメンタリー。監督は蒼風の長男の勅使河原宏。
東京1958 (Tokyo 1958)
2023年9月22日、26日 上映の詳細はこちら
1958年 / 30分
実験映画集団シネマ57がコンクール出品のため製作した作品。“東京の混沌と古い日本”をテーマに、浮世絵、着物など日本文化を外国人の視線から描く一方、現代東京の猥雑さを対比させる。
ホゼー・トレス (José Torres)
2023年9月22日、26日 上映の詳細はこちら
1959年 / 25分
初の欧米旅行で出会ったプエルトリコ出身の22歳のボクサー、ホゼー・トレスを追ったドキュメンタリー。
おとし穴 (La Trampa)
2023年9月22日、25日、27日 上映の詳細はこちら
1962年 / 95分
安部公房と初めて組んだ初長編。炭鉱、貧困、瓜二つの男、白いスーツの殺し屋、廃集落に残された女、それらを眺めている幽霊。粟津潔によるタイトルと前衛的でシュールな映像、武満徹、高橋悠治、一柳慧によるプリペイドピアノとチェンバロの音色が不穏な空気を醸し出し、映画全体がまるで悪夢のような様相を見せる亡霊の映画。(シネマヴェーラ渋谷)
いのち ー蒼風の彫刻 (Vida. Las esculturas de Sofu)
2023年9月22日、27日 上映の詳細はこちら
1962年 / 18分
草月流の創始者である父・勅使河原蒼風による独特のフォルムを持った彫刻の数々を、アヴァンギャルドなイメージの積み重ねと音響効果によって構成した異色の美術映画。室内に展示されていた彫刻が、森や海といった大自然の風景と対峙させられ、オーバーラップ、コマ撮り、クローズアップなどの手法によってアブストラクトな映像の動きに作り上げられる。動かない彫刻に内在する「いのち」の躍動を、映画によって再構築する試み。(シネマヴェーラ渋谷)
砂の女 (La mujer de la arena)
2023年9月23日、27日、28日 上映の詳細はこちら
1964年 / 147分
砂丘に昆虫採集に来た教師自身が砂に囚われ逃げられなくなる。安部公房の個人主義や近代社会への疑いが、脱出を諦め砂の男に変わっていく教師によって露わになる。寄生する生物のような砂の恐さと美しさ、肌に汗と砂がまとわりつく岸田今日子の官能、素晴らしい音楽。国内のみならずカンヌで審査員特別賞受賞、アカデミー賞監督賞&外国語映画賞にノミネート、さらにゴダールやスコセッシを熱狂させた勅使河原宏の最高傑作。(シネマヴェーラ渋谷)
Ako (Episodio de la película colectiva La fleur de l’âge)
2023年9月22日、27日 上映の詳細はこちら
1965年 / 29分
日本、イタリア、フランス、カナダの4ヶ国の合作によるオムニバス映画『15才の未亡人たち』の日本編として製作された安部公房原作・脚本による作品。パン工場で働く16歳の女性アコを主人公に、シネマヴェリテ風に描かれる、60年代の青春の姿。ボーイフレンドたちと過ごす休日のスケッチを主軸に、日々の工場での作業風景と生活に対する若者たちのコメントがコラージュされる。
ホゼー・トレス Part II (José Torres II)
2023年9月22日、26日 上映の詳細はこちら
1965年 / 58分
初の欧米旅行で出会ったプエルトリコ出身の22歳のボクサー、ホゼー・トレスを追ったドキュメンタリー。無敗だった彼の練習やタイトル戦の様子のみならず、白人社会の中で生きるマイノリティーの孤独も映しだしている。(シネマヴェーラ渋谷)
他人の顔 (El Rostro Ajeno)
2023年9月23日、28日、29日 上映の詳細はこちら
1966年 / 122分
安部公房・武満徹・粟津潔に加え美術に磯崎新を迎え日本のアートが結集した傑作。ベルイマン『ペルソナ』やフランジュ『顔のない眼』に並ぶ顔と自己同一性をめぐる物語。(シネマヴェーラ渋谷)
インディレース 爆走 (Indi Var Race – Roaring Course)
2023年9月22日、27日 上映の詳細はこちら
1967年 / 73分
1966年に富士スピードウェイで行なわれた“インディレース”のため羽田に降り立つレーサーたち、メカニックたちを追い、遂に決勝レースを迎える。レースは120人のスタッフと26台のカメラを駆使して撮影された。合間にスピード狂の若者たちへのインタビューが挟まれることで現代におけるスピードの意味が問われる。(シネマヴェーラ渋谷)
燃えつきた地図 (El Hombre sin Mapa)
2023年9月23日、26日、28日 上映の詳細はこちら
1968年 / 118分
安部公房との最後の作品。失踪した男を探す探偵が次第に自分自身を見失い都会の迷宮に飲み込まれる。勝新は自ら選んだ作品でくたびれた探偵を好演。壊れかけたような女を演じる市原悦子、失踪人の同僚を演じた渥美清も素晴らしい。歪な画面構成に噛み合わない映像、ちぐはぐな会話、さらに実験的映像も魅力的で突然挿入されるシュールなシーンに引き込まれていく怪作。(シネマヴェーラ渋谷)
サマー・ソルジャー (Soldado de Verano)
2023年9月24日、29日、30日 上映の詳細はこちら
1972年 / 104分
岩国の米軍基地から脱走したジムは水商売の女に匿われ、援助組織の手配で転々と居場所を移るが…。脚本は日本文学研究家のジョン・ネースン。ベトナム反戦や70年安保などで揺れる社会を、脱走兵の逃走劇を通して炙り出す。2人の脱走兵は勅使河原自身がNYで捜した素人で、ドキュメンタリー的手法が際立っている。勅使河原はこの映画を最後に長編映画から一時撤退し、本格的な復帰は18年後となる。(シネマヴェーラ渋谷)
新・座頭市 第3シリーズ「虹の旅」 (Zato-Ichi, Nueva serie. El Viaje del Arcoiris)
2023年9月23日、24日、29日 上映の詳細はこちら
1979年 / 45分
大商人・中村鴈治郎の娘が里帰りし、あんまを呼ぶ。番頭は「地元のあんまでは何かと噂が」と座頭市を招くが…。素晴らしい俳優陣を揃えた勝新の意欲と勅使河原の映画文法にこだわらず“科白やカットではなくシーンで表現する”演出方法が化学反応を生み出した怪作。(シネマヴェーラ渋谷)
新・座頭市 第3シリーズ「夢の旅」 (Zato-Ichi, Nueva serie. El Viaje de los Sueños)
2023年9月23日、24日、29日 上映の詳細はこちら
1979年 / 45分
目が見えるようになった市が遊郭に上がり、露天風呂で乳房のある男と出会い…。市の夢をほとんど科白もストーリーもなしに描いた勅使河原の実験的座頭市。見える市と見えない市がすれ違うシーンなどシュールかつカッコいい場面が連続する。(シネマヴェーラ渋谷)
動く彫刻 ジャン・ティンゲリー (Esculturas animadas: Jean Tinguely)
2023年9月24日、30日 上映の詳細はこちら
1981年 / 14分
スイスの彫刻家ジャン・ティンゲリーの1963年の初来日時に撮影され、18年後に再編集したドキュメンタリー。ナレーションの台詞は大岡信によるもの。廃材となった機械の断片を使って動くオブジェにすることで「機械を目的から解放してやりたい」と述べる芸術家。愉快な永久運動を続ける目的の無い機械群は自由を感じさせる。(シネマヴェーラ渋谷)
アントニオ・ガウディ (Antonio Gaudí)
2023年9月25日、30日 上映の詳細はこちら
1984年 / 72分
アントニオ・ガウディの生物的な趣のある曲線的建物を幻想的且つ静謐に撮影したドキュメンタリー。ズームイン、ズームアウトの多用、聳え立つサクラダファミリアのあおりのショットなど素晴らしい撮影は瀬川順一によるもの。ナレーションは宮口精二。音楽は武満徹。(シネマヴェーラ渋谷)
利休 (Rikyu)
2023年9月24日、30日 上映の詳細はこちら
1989年 / 116分
利休と秀吉の茶室という小宇宙での問答は息を呑む緊迫感。赤瀬川原平脚本と勅使河原演出、武満の音楽がひとつになった傑作で、吉右衛門、幸四郎ら歌舞伎役者の他に、ドナルド・リチ―や細川護煕まで出演している。国宝級の茶器や美術品を揃え、「表千家」「裏千家」「武者小路千家」「草月会」が後援。山口小夜子を淀殿に据えたのも素晴らしい着想で、まさに”美はゆるがない”。(シネマヴェーラ渋谷)
豪姫 (La Princesa Goh)
2023年9月25日、30日 上映の詳細はこちら
1992年 / 142分
勅使河原監督の遺作となった古田織部と豪姫の物語。当時人気絶頂だった宮沢りえ19歳、仲代達矢と笈田ヨシ(秀吉を演じたパリ在住の演出家・俳優)、共同脚本に赤瀬川原平、音楽は武満徹とまさに才能が集結した一大歴史絵巻。自然描写や小道具にも監督の美意識が横溢している。(シネマヴェーラ渋谷)
開催期間:2023年9月22日(金)〜30日(日)
開催地:スペイン・バスク州ギプスコア県サン・セバスティアン
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