中島詩織 スペイン滞在記「ハーフタイム」連載 No.2
こんにちは。Burela FSFの中島詩織です。
今回は私が住む地域特有の言語について少しお話したいと思います。
スペイン語とひとことで言っても、日本と同じように標準語や方言があり、地域によって大きく異なる言語を話したり、特有のアクセントがあったりと様々です。
いわゆるスペイン語は Castellano(カステリャーノ)と呼ばれスペイン全域で話されますが、スペインにある17州の中の6州ではスペイン語以外にもう一つの公用語が話されています。
バルセロナのあるカタルーニャ地方には Catalán(カタラン)、ビルバオのあるバスク地方はでは Euskera(エウスケラ、バスク語)と呼ばれる各地方の言語があり、そしてここ、ブレラが位置するガリシア地方にはガリシア語、Gallego(ガリェゴ)という特有の言語があります。
このガリシア語というのは私にとっては相当な強敵です(笑)。何故かと言うと、このガリシア語はスペイン語よりポルトガル語に近い言語だからです。私と同じく今季ブレラに移籍してきたブラジル人の二人はまだスペイン語を余り話せないのですが、監督やチームメイトが話すガリシア語はばっちり理解できるそうです。
以下にいくつか例を挙げますね。
スペイン語:Yo juego al fútbol.(ジョ・フエゴ・アル・フットボル)
ガリシア語:Eu xogo ó fútbol.(エウ・ショゴ・オ・フットボル)
スペイン語: Yo soy jugadora de fútbol-sala.(ジョ・ソイ・フガドーラ・デ・フットボルサラ)
ガリシア語: Eu son xogadora de fútbol-sala.(エウ・ソン・ショガドーラ・デ・フットボルサラ)
Yo(ジョ)というのがスペイン語で「私」を表すのですが、ガリシア語だとEu(エウ)になり、これはポルトガル語と同じですね。
ガリシア語では、J が X になり、Sh のような発音になるようです。
そして、日本語の「はい」「いいえ」にあたるのが、スペイン語では「Si」「No」となるのですが、ガリシア語では「うん、もちろんだよ」(スペイン語のpor supuestoにあたる表現です)と言う意味で、「はい」をもう少し強調したい時の言い方として “ Si, o(h) ” という言い方があります。
カタカナで書くと “シィ、オゥ!” です。そして、私の名前は詩織。みんなからはシオと呼ばれています。初めのころはみんなが “シィ、オゥ!” という度に振り返っていました(笑)。想像したら笑っちゃいますよね?
今ではアクセントの違いで、この掛け声と、誰かが私を呼んでいる時を聞き分けられるようになりました。
ちなみに練習や試合時の作戦板には選手の頭文字を書きます。そして、私はいつも X と書かれています(笑)。 私の名前 Shio を監督は Xio だと思っているんでしょうね。全然問題はないですし、いいんですけどね!
そして、監督はたまにガリシア語で話します。分からないときは監督自身やチームメイトが丁寧に教えてくれるので問題はありません。でも、怒っていると早口のガリシア語になってしまい、聞き取るのにかなり苦労します(笑)。
全選手が週に一度、クラブの各カテゴリーの子供たちの練習にそれぞれ参加するのですが、そこでは指導者も子供たちも皆ガリシア語で話します。なかなか理解するのが難しいのですが、分からないときは指導者の方が優しく教えてくれます。
また、ガリシア語で口語的に良く使われる独特の表現もあります。
スペイン語の単語のの最後尾に – ÑA /- ÑO(ニャ/ニョ)を付けるような感じで、例えば「ありがとう」はスペイン語で “ Gracias ”(グラシアス)と言いますが、ガリシア語では “ Graciñas ”(グラシーニャス)と言います。
「また後で」を意味する “ Hasta Luego ”(アスタ・ルエゴ)は “ Ata loguiño ”(アタ・ロギーニョ)となります。私はこの響きが気に入っています。なんだか可愛い感じがしませんか?(笑)
その他にも…
最初にスペインに着いた時、スペイン語的にはほぼゼロからのスタートだったことを考えると、言葉の上では格段に上達したと思います。最初は、挨拶をしたり、自分の名前を言える程度でしたからね。その頃に比べれば理解度も高くなったと自身でも感じています。分かりやすい冗談等なら言い合えるようになりました。
ただ、まだまだ自分の言いたいことを上手く伝えられなかったり、相手の言いたい本当の意図を読み取り切れなかったり、簡単な言い回しをしてもらわないとなかなか理解できなかったりと、学ばなければならないことはたくさんあります。そんな中での新しい言語との出会い。似ている部分はあるけれど、やはり当初は少し戸惑いました。
でも、先ほども書いたとおり、分からないときは親切に教えてくれるチームメイト達がいます。ガリシア語に限らず、スペイン語やブレラの土地のことも。
新しい地に住むことになり、正直かなり不安がありました。ですが、チームメイトをはじめとするチーム関係者はみんな優しいし、街の人たちも親切な人たちばかりです。今回記事に書いたガリシア語のことを教えてくれたのは、ルームメイトのPatriです。いつも色々と助けてくれます。
他のチームメイト達もすごく気さくで優しく、食事や散歩、ゲーム等に誘ってくれます。私は車を持っていないのですが、皆の車で色々な場所に連れていってくれたりもします。そういうみんなの気遣い一つ一つがとても嬉しく、大変感謝しています。今度記事の中でチームメイト達も紹介できればいいなと思っています。
ピッチの中で自分のプレーをして認めてもらい信頼関係を築くのがフットサル選手としてはすごく重要なことですが、ピッチ外でも信頼関係を深めていければいいなと感じています。
フットサルをしにスペインに来たのだから、フットサルに専念するのはもちろんのことです。しかし、フットサルのお陰で今は日本とは違う言語や文化に触れることが出来ているので、この環境を無駄にするのはもったいないと思います。
フットサルがなかったら、今私はスペインのブレラには住んでいないでしょう(笑)。
新たな出会いがあるこの環境で、フットサル以外にも色々なことを学び、楽しみたいといつも考えます。スペインに限らず、海外で生活するには難しいことも多々あると思いますが、私はスペインに来てから約3年、周りの人たちに恵まれているお陰もあり、大きな問題もなく充実した生活を送ることが出来ています。
言葉の話からかなりそれてしまいました。新しい言葉を覚えるのは難しいですが、少しずつ適応していきたいと思います。この3年間の経験で、分からない単語があっても会話の流れから意味を想像する力がつきました。あっているかどうかの保証はありませんが(笑)。
毎日イメージしながら、時にはジェスチャーを交えながら、私はここで生活しています。
ちゃお!
1988年7月12日 東京生まれ。
2000年から2011年まで日本のFUNフットサルクラブLadiesの中心選手として、全日本女子フットサル選手権5連覇(2005-2009)をはじめ日本国内のタイトルを総なめにした後、スペインに渡りアトレティコ・デ・マドリード女子にてスペイン女子フットサル一部リーグに参戦を開始(2011-2012)。
同クラブにてマドリードフェデレーションカップ優勝、スペインリーグ優勝、コパ・デ・エスパーニャ準優勝を経験後、FSFリオハを経て、今シーズンからブレラFSFに所属し中心選手として活躍中。
2007年以降日本代表に選抜され、アジア・インドアゲームズに3度の優勝経験あり(2007, 2009, 2013)。
2013年からは同代表キャプテンを務める。
CD BURELA FSF 公式サイト:http://www.burelafs.org
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